2013年1月27日日曜日

女子少年院視察レポート


今年は、息子の中学校生活最後の年、PTAの委員を決めるアンケートに
「誰もいなければやります」に ○ をつけたら、見事にやる人が誰もいなくて、
今年は、地域委員というのを引き受けました。
ちなみに、1年生のときは、役員選出委員ていうのをやっていました。

地域委員というのは、学校と家をとりまく地域に関わる色々なお仕事をする係で、
運動会とか、お祭りのパトロールをしたり、防犯プレートを配布したり、
地域のお祭りに協力したり…
各クラス1名の委員が3学年ぶん9人で分担してやってます。

その中で、数ヶ月前に、各学校から1名だけ参加できる、
杉並区の地域専門委員会という研修に参加させてもらって、
それがとてもインパクトあったので、その報告書をこちらでも。

それは、都内にひとつだけある、女子少年院の視察で、
うちから自転車で30分くらいのところにあるその施設を、
視察させてもらいました。
PTAに提出した報告書を以下、ペーストします。


 地域委員3A 吉岡
実施日2012-10-16

都内唯一の女子少年院
全国に52庁ある少年院(女子の施設は全国に9つ)のうち、都内に1つだけある女子少年院の視察に行ってきました。定員100人の施設に、現在は25人の女子が生活しているそうです。一般短期処遇と長期処遇があり、その施設ではそれぞれ5カ月、10カ月の処遇とのこと。訪問した愛光学園は、いかにも「矯正施設」といった厳めしさをなくし、建物全体を暖かみのあるデザインにしているとのこと。サイコドラマ用の舞台のある部屋や、箱庭療法のための部屋、癒しの空間である中庭など、設計にはさまざまな工夫が凝らされていました。

施設内の見学
施設内を案内していただくにあたり、撮影NG、荷物はすべて会議室に置いてくる、知っている子が万が一いても声をかけない、といった注意がありました。子どもたちが授業を受けている教室や、体育館、プール、中庭、面談室、サイコドラマの部屋、美容室(ここで1月に一度髪を切る)などを巡りました。

施設の構造
中庭は、施設の建物に囲まれた中央にあり、外からは見えないようになっていて、そこで先生と一緒に庭の掃除をしたりしながら面談をしたりする。かしこまらず、こうして作業をしながら話をすると落ち着いて話ができるそうです。これはあくまでもひとつの例で、運営には様々な工夫がされているようでした。この施設は、他の地方の少年院とちがって街中にあり、校庭は隣接するマンションから丸見えのため、校庭が使えないそうです。唯一、朝礼だけは、その校庭に出て、サンバイザーをかぶってラジオ体操をするそう。基本、保健体育はプールと体育館をつかうそうです。

施設内での活動
矯正施設とはいっても、15〜16歳の子ども。多くの場合、問題は「本人」というよりも、保護者との関係にあることが多いようです。施設では、生活指導、職業指導、教科教育、保健体育、特別活動の5つの柱で活動しているそうですが、表向きにはそうなのですが、実際に、一番肝となるのは、人間関係(とくに親との関係)の調整だそうで、面会の調整や、面談時の親へのはたらきかけなどに相当なエネルギーを投入されているようでした。

入所の期間
短期で5カ月、長期で10カ月というのは、長いようにみえて、あっという間だそうです。どうしても「早く家庭に戻してあげなければ」という方向で動くそうですが、そもそも家庭の問題が原因であることが多く、事態は複雑です。その施設は、壁の色が暖色で統一され、教室のフロアは天井が高く開放感があり、癒しの空間として中庭があり、サイコドラマや箱庭療法、カウンセリングなども取り入れていて、少年(女子のこともそう呼びます)の心と体の健康の回復のために工夫が凝らされた環境。しかし、ずっとここに置いておくわけにはいかないというジレンマがあるようでした。視察をさせて頂いた印象では、ここに入所する一番の目的は「罰として」というよりは、傷ついた心の癒し、体の健康の回復、自己表現や言語を通して、より健全に人間関係を取結ぶ能力の獲得、という部分が大きいように思いました。それを充分に達成するには、短期で5カ月、長期で10カ月という期間よりも、もうすこし長くいてもよいのではないかと、個人的には感じてしまいました。

入所者の健康状態
施設を案内してくださった次長さんは素朴なたたずまいの男性で、小さな声で淡々と重い話をされる誠実な語り部でした。視察にきたPTAの母親たちは(私もふくめ)どんな顔をして聴いたらよいかわからないといった複雑な表情を浮かべていました。施設内には治療を受けられる医務室があるのですが、それは入所してくる女子の多くが病を患っているということで、摂食障害、アレルギーなどもあるが、多くの場合、性病とのこと。

入所事由の内訳
窃盗3、傷害暴行8、恐喝3、覚醒剤1、道路交通法違反0、その他5、ぐ犯5、これに加えて薬物の問題も。

薬物指導のプログラム
近年、薬物を断つことが非常に難しいという問題があり、今年の秋から、全国何か所かで3ヶ月の薬物指導の集中プログラムが始まるそうです。

保護者との面会
保護者との面会では、顔をみるなりつかみ掛かるとか、話していて激昂してしまい、もっていたペットボトルを投げつけるなどの行為も珍しくなく、その場合、まずは対面せずに、別室で電話で話すところから始めるそうです。そうすると、落ち着いて1時間くらい話せるということもある、と。一方、運動会や学習発表会などの行事に保護者を呼んだものの、「来る」と約束しながらも来ない保護者がいたりそんな時の子どもへの寄り添いも職員の重要な仕事。きけばきくほど子どもの問題というよりも身近な大人の問題と思わざるを得ない。でもその大人も、かつては子どもだったという堂々巡り。

保護者のエピソード
入所者の保護者向けに施設の案内をしていた所、プールの所で泣き出した母親がいたそうです。話をきくと、入所している娘さんは水泳が好きで都大会で記録を競えるほどだったということでした。ここでも泳げることを知ってその母親は泣き崩れたと。次長さんのやさしく穏やかな語り口に、見学者の私たちはますますどんな顔をしたらよいかわからず複雑な表情をうかべるばかりでした。

地域社会とのつながり
その施設には、ボランティアの人が、入所している少年(女子のこともそう呼ぶ)の話し相手として通ってくれたり、絵手紙を教えにきてくれたり、盆踊りに参加したりと、地域の人々が様々なかたちで協力してくれているそうですが、一方で、まだまだ地域の人の理解は課題だそうです。あるときは、近くに引越してきたばかりだという人が、血相を変えて受付にやってきて「お宅は少年院だそうだけど脱走とかないんですか!このへんは安全なんですか」なんて不躾なことを訊かれたこともあるそうです。

質疑応答
Q:仮退院、保護観察を経て、また最処分になる子どもはどのくらいいるのか?
A:50人に対して7人(14%

Q:職員のバックグラウンドは?
A:福祉、社会学、心理学といった科目のある法務教官採用試験というのを受ける。集合研修も3カ月、6カ月と厳しい研修があるそうで、ここの子どもたちの生活より厳しいかもしれない。

Q:職員は出産しても仕事を続けるか
A:国家公務員なので、産休育休は完備。現在も6人もの職員が育休をとっているそう。そのため、中堅層の入れ替わりがはげしく、職員の年齢層が二極化してしまうのは悩みとのこと。